「過ぎる」こと 【MIX】
MIX作業において、
自分でもよく悩み、そして人からもよく質問される、そんな「疑問」があります。
ずばり「どこをEQすべきか」。
ネットで情報を漁ればいくらでも出てきます。
楽器毎に「ここをカットしてー、ここをブーストしてー」と実に多くのノウハウを集められるはずです。
色んな手法があり、色んな意見がありますが、まぁ色々参考にしつつ、
自分なりに昇華していけば良いじゃない、と僕は思います。
が、昇華していく過程で陥りやすいのが、「過ぎる」こと。
例えば、500Hzあたりってkickには結構邪魔な所で、
この辺りが凹んでる方がバランスは良くなる、というのが僕の持論で、
少しカットする方向で混ぜることが多いのですが、
これを自分の中で信じすぎて、突き詰めすぎて、いつの間にかエスカレートして、
「500Hzなんかkickには一切いらない!!」と、
EQで18dBカット!みたいなビックリ行動に至ってしまった、なんて経験があります。
やりすぎると当然、破綻します。
でも、500Hzカットの方向性は正しかったのです。
日に日に「じゃあ、もう少しカットした方がすっきりするんじゃないか?」と試み、
確かにすっきり度は増したので正解だと思い込み、
「じゃあもう少しカットしたら、もっとクリアな音になるんじゃないか?」と深追いし、
確かにクリアになったので、やはり俺の考えは正しいんだと見失い出し、
探求すると止まれない時がたまにあるんですね。
であるとき、自分のkickの音がすごく嫌いになる。
なんでこんな音なんだ?って、急にどうしようもなく気になるんです。
そりゃそうだ、18dBもカットすりゃ。(・・)
過去のプロジェクトファイルとか開いたり、音を聞き比べたりして、
「あぁ、いつの間にかやり過ぎてたんだな」と。
でも、気付けば本当の正解がハッキリと見えてきます。
もしかしたら「過ぎる」ことを経験して、初めて正解が分かるのかもしれませんね。
「過ぎる」ことも含め、日々変化する我々音楽家のアクティブな音。
成長するサウンド。探求する音楽。
もしかしたら、それもまた楽曲のドキドキ感・わくわく感に繋がっているのかもしれません。
編曲・MIX・サウンドプロデュース
tkr