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実践的コード進行3 【作曲】【編曲】

 当サイトのコード表記は基本的に、key=Cで分かりやすく記載しています         




 | C | G/B | Am | G |



有名な「カノン進行」呼ばれるものですね。
J-POPでは必須のコード進行です。
2小節目がG/Bとなるのがポイント。
Gの構成音「ソ・シ・レ」の中の「シ」の音へベースが移動する「オンコード」になっています。
このオンコードによって、ベースのラインが「ド→シ→ラ→ソ」と綺麗に流れ、
対位法的にも美しく耳に響くようになります。

さて、このカノン進行のとある変化形がこちら。

 | C | G/B | Gm/B♭ | Am |



「ド→シ→シ♭→ラ」とベースが半音ずつ下がる進行になります。
これをクリシェと呼びます。

さらに注目すべきは、3小節目の「Gm」。
Gm(ソ・シ♭・レ)で一瞬スケール外の音(シ♭)が入るため、
聴きなれたコード進行にスパイスが効き、リスナーをハっとさせることが出来る進行となります。

これは、 実践的コード進行2で紹介した「F-5」とは全く逆のアプローチです。
結果的に見慣れないコードになってしまった、のではなく、あえて率先してスパイスを効かそうとした例です。




どういうことか

 | C | G/B | Am | G |

 | C | G/B | Gm/B♭ | Am |



例えばカノン進行()の3小節目、
そこでボーカルのメロディラインが「ラ」と「シ」の音を使っていないものだったとします。
つまり「ド」~「ソ」辺りで展開するメロディだったとしましょう。
その場合、のコード進行へ変化できる可能性がでてくるのです。
「ラ」や「シ」が使われていなければ「Gm」の「シ♭」とぶつかることなく協和できるからです。
Gmは「シ♭」というスケール外の音を含むため、スパイスの効いた響きが得られ、
楽曲のコード進行に「味」や「緊張感」を与えてくれ、
適度な割合でこのようなコードが混ざると聴き手を飽きさせない玄人のコード進行を演出できるので、
ポピュラーなコード進行にはこのようなスパイスが欠かせないのです。
なのでスパイスを使える箇所だったので、変更した、といういきさつです。




使いすぎはよくない


しかし、スパイスは所詮スパイスです。
シンプルでポピュラリティの高い「売れる」曲を作ろうという前提である場合、スパイスの入れすぎは逆効果です。
Bメロに1回、サビで1回くらいのバランスが、ちょうどいいくらいかもしれません。




スケールにも注意


スパイスコード(スケール外の音を含むコード)を使うときは全トラックのスケールにも注意が必要です。
Gm上で「シ」の音を出せばぶつかってしまいます。
「dimコードの使い方2」の記事で紹介した不協和も同じですね。
スケール外の音を含むコードを使った箇所は、全てのトラックで不協和がないか気を配る必要があります。




メロディの制約


「ラ」や「シ」の音がボーカルのメロディラインで使われていない場合に「Gm」へ変更ができる、ということは
「ラ」や「シ」の音が使われていれば「Gm」へ変更できないということになります。
つまり、メロディから自由に曲を作った場合、メロディラインがコードの選択を良くも悪くも制約してしまうのです。
スパイス的、ギミック的なコードを積極的に取り入れたいのならば、
メロディとコードの関係をしっかり把握する必要があるのです。






編曲家は、このようなスパイスを与えてくれるコード(僕はスパイスコードと呼んでいる)を
入れられないか模索しながらコードを組むため、
結果的にスパイスコードになった、ではなく、使おうとして使ったということになります。
こにようなコードテクニックは、編曲家のセンスと引き出しの数が問われるものであると僕は思うので、
日々精進、頑張ります!






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